会場に来てから視界の全てを占領していたそんな光景は、


――――まるで嘘のように弾けてあたしの前から消え去った。その瞬間に取って代わったのは、唯一無二のこの男。





「翔太」





着々と中央との距離を詰めていく男のスーツに包まれた腕を、思い切り引いてその動きを遮る。

その瞬間に見えた表情は驚き一色に染められたもので。

スローに移りゆく視界。

他でもないあたしによって段々と近付く翔太との距離。



「呆れてるワケないじゃない。ばーか」







微笑みを混じてそんな囁きをおとして直ぐに。

顔を傾け奴の後頭部を引き寄せることによって、眼すら閉じていない翔太の唇に自らのそれを押し当ててやった。












 同窓会での彼らの事案
(その後にどんな野次を飛ばされたか、なんて論外)