「………、あたしにどうして欲しいのよ」


翔太が時折見せる弱ったような表情は、いつものコイツから掛け離れている所為で酷くあたし自身を揺さぶってくる。

それが計算だったらきっとこんなに動揺しないんだ、あたしも。

無意識の内に晒されているから、それがまるで。あたしにだけ許した表情みたいに思えて、無下にすることが出来ない。







「あいつと近付くなって言いたいとこだけど」

「……それは」

「無理だろ。俺だって会社に身を置く人間なんだからそんくらい分かる」






急かされる状況に漸く応える気になったのか、足取りはゆっくりしたものに変わりはないけれど中央へと向かい始めて。

腕を掴まれるあたしは、自ずと翔太に倣って同じ場所へと向かう形になる。









見上げた先にある旦那の表情は、固く引き結ばれたものだった。



「―――……呆れたか?小さいよな、俺」







自嘲的に零された笑み。

それを見た瞬間に一気に膨張する愛しさ。これは絶対に、翔太以外の男には芽生えない感情。










一般人なりに豪勢に執り行われた、パーティ仕様の同窓会。

赤と黒の混じり合う絨毯。

点在する扉の前に待機する、数人のスタッフの男女。


そして中央部分に集まり笑みを交えて互いに談笑する、嘗て共に学生時代を過ごした面々。