「あっそう」


だからこそ、あたしは不機嫌な表情でぶっきら棒な返答を向けるに徹する。

腕組みをして外方を向く此方の様子を認めた翔太は、喉奥で笑みを噛み殺すから堪らない。

相手が次にどんな行動を起こしてくるか、なんて。特段慣れたい訳では無かったけれど、憶測ばかりが達者になってしまっていて。






その隙にもあたしの掌からハガキを抜き取った男は、懐から取り出したボールペンで「参加」部分に丸をつけていて。

横目で凝視するあたしなんて微塵も意に介さず、さらさらと氏名まで記入してしまった。

ちゃっかりとその隣に現れたあたし自身の名前を伸ばした視線が捉え、軽く溜め息。そんな反応を見せるあたしを鼻であしらう翔太。






「いいじゃん。見せ付けてやろうぜ」

「………何をよ」








隻手で掻き上げた髪と共に解りきった問いを投げ掛けるあたし。

その瞬間にも腰に添えられた腕に力強く引き寄せられ、従うように腕の中におさまるものの。




「馬鹿じゃないの」










耳元で吐息混じりに囁かれた言葉を辛辣なそれで一蹴するや否や、奴のネクタイを引っ張って顔を傾け―――口付けた。少しだけ背伸びをして。

あたしの"反撃"を受けた翔太は、至極愉しげに笑ってみせた。