「(……まさかマジで……、)」


おずおずと上らせた視線は、翔太の其れを忍んで向けたつもりだったけれど。

まるで示し合わせたかのように合わさったので思わず小さく息を詰める。





「………お手柔らかにお願いしますよ……」

「無理」

「はぁ!? ちょ、無理って何よ!」

「さっき言っただろ、俺」



逃れようにも、拘束された腕の所為でそれが叶うことはなく。

無意識の内に顔を顰めていれば、何を思ったのか奴は瞬間的に腕を解放し、間髪を容れずに。







「――――今日は寝かせねーって。男に二言はねぇから」

「それ……、…使い方間違ってるわよ」

「細かいこと気にすんなって」









投げ出されていたあたしの指先を自らの其れと緻密に絡め、躊躇うこともなく口許に持っていくと。


「な?」




くらりと目眩を覚えるほどの色香を混じて此方の指先にキスをおとすものだから、どうしようもなく反応に困る。

眼前でどっぷりと余裕そうな笑みを浮かべ翻弄する男。




―――さて、今夜はどんなシナリオを運んでくるのだろうか










 彼に関する浮気事案
(彼女が眠りに就けたかどうかを知るのは、彼らだけ)