「…………翔太……クン………、」



やっほ、なんて片手を上げてフランクな挨拶を向けるあたしを厳し過ぎる視線で見下ろす翔太。

うわ、怒ってる。なんか知らないけど物凄くキレてる。






「お前なんだよその恰好」

「えっと………コスプレ?」

「ハ?」

「いやごめん間違えました。同僚に借りました」

「で?俺が浮気だどうのってのは解決したよな?」

「ああ、はい………どうもあの後輩くんが犯人だったようで……」




ここまで散々下手に出ておいてアレだけれど、ぶっちゃけこれってあたしの所為じゃなくない?

なんであたし謝ってんの?え?









「ねえ、これあたしのせいじゃないと思うんだけど」

「いきなり開き直りかよ」

「だって絶対そうじゃん!モトはと言えば翔太がヘンな後輩持つからじゃん」

「否定はしねぇ。でも、だからと言ってそんな恰好晒して良いことにはならねぇだろ」

「は?なに?そこに怒ってるワケ?器ちっちゃ!」

「おま……、………今日寝かせねぇからな」

「ち、ちょっとちょっとちょっと!!」









ついに青筋の立ったらしい翔太はむんず、とあたしの腕を掴むと荒い足取りでマンションのエントランスホールを突っ切っていく。

焦燥もそのままに振り向けば、お騒がせ男女は何処へやら。

もう既に自分たちのお楽しみタイムへと突入してしまったらしく、あたしの視界には宵のみが広がりを見せていた。