神風「恥ずかしい話、私は悠真の事を
他人に任せきりにしていた。
家内が亡くなるまでは育児は
全て彼女に任せ、亡くなってからは
家政婦やメイドに任せていた。
今まで、父親らしい事をして来なかった
私が突然、父親ぶるのも違う気がしてね
悠真の成長には無関心だった。」

社長とこうして身の上話をする事は
もちろんなかった。
副社長も...社長の事は何も
話さないから家族の話を
聞いたのは今日が初めてだ。

噂話程度に耳にした事はあったけど
副社長の母親が亡くなっていたという
確信を得たのも、もちろん初めてだ。

神風「6歳の頃から実の母親ではない。
しかも使用人に育てられた悠真は
案の定、わがまま放題な大人になった。
今は随分とマシになったけど
高校生の頃の悠真は酷かった。
毎晩、夜遅くまで遊び回り
学校にもろくに通わず卒業さえも
危うかった。何とか私の口利きで
高校を卒業し、大学にも進学できた。
でもね、あの子は高校の卒業式の日
お世話になった先生に卒業証書を
投げ付けて言ったんだ。
卒業させてやったなんて
いい気になってんじゃねぇって!」