私の事を抱き締めながら
切ない声色の副社長は言う。

悠真「なあ、紫苑。
こう何度も何度も断られてると
さすがに俺もヘコむ。
紫苑が俺に気のない事はよく分かった。
でも、俺はどうしても欲しい。
だから、俺に付き合ってよ。」

紫苑「俺に付き合ってって?」

悠真「紫苑はこれから先
誰とも恋愛しないんだろ?
誰とも付き合う気ないんだろ?
だったら、俺に付き合って。
俺のワガママに付き合え。」

こんなにもワガママで強引な告白が
未だかつてあっただろうか。
オモチャ買って貰えない子供かよ。

悠真「好きなんだよ、紫苑の事が。
俺が独り占めしたいんだよ。
他の誰かのものになるなんて
絶対に嫌なんだ。」

...ああ、私。こんな風に
誰かから愛された事って
あったのかな?
誰が私を愛してくれたかな?

思い出せない。いや、本当は
誰からも愛されてなかったのかもしれない。
そう思うほどに、私は
初めて愛情というものを知った。

紫苑「いいよ。付き合うよ。
好きになれるかどうかは分からないけど。」

でも、その愛情の返事は
未だに分からないままだった。
ふと、疑問に思ったんだ。

私は本当に誰かを愛する事が
出来るのだろうか?