《ママ、ごめんなさい。
祐介くん、ハロウィンおばさんに嫌な事されてないといいね。
沙羅達が見たり聞いたりしたこと、ちゃんとお座りして話さなきゃね》

《そうね。じゃあその素敵な力を返すのはやめようね。
ホント沙羅はパパや百合さんそっくり。なんでも解るからすごいね。
みんな知らないから『人前で怒鳴らないしつけの秘訣を教えて』なんて言うけど……》

ママと沙羅が心でお話ししてる間、隣では芽衣ちゃんがママに大きな声で叱られて…わあぁ…またまた泣いちゃいました。



警察の人が到着して、雪恵ちゃんや秘書の和樹さん、おかあさん達に、覚えていることを思い付くまま話しました。

ちなみに理事長先生の雪恵ちゃんに向かってはタメ口で、和樹さんには敬語でお話していますが、いつもそうです。

「ママたちのお迎えが来るまで、祐介くんと芽衣チャンと三人で遊んでたら、
門の前に大きくて真っ黒なピッカピカの車がドドーンと停まってね、中からハロウィンみたいな色のお洋服を着たおばさんが降りてきて、
祐介くんのお手々を掴んで連れて行こうとしたの」

「その人は祐介くんの知り合いなのかな?」和樹さんに聞かれるままに答えます
「はい、祐ちゃんって呼んでました。
祐介くんもその人のお名前を...何だったかな?ハロウィンのオレンジ色みたいな...みかん?あ、みか!みかおばさんって呼んでました」

「美香さん…もう…ここまでする?犯罪じゃない!」
祐介くんママが震える声でつぶやきました。何か難しい関係みたいです。 

先生を呼びに行ってから戻ってくるまでの間のお話は芽衣ちゃん担当です。
「沙羅ちゃんにも言われたし、祐介くんが連れて行かれるのイヤだから、頑張って絶対にお手々離さないでいようと思っていたの。
でもね、祐介くん連れて行かれちゃった...だって、みかんおばさんね、
『何あなた、可愛くないわね』って芽衣のこと押し倒したんだもん!
...うっ...え~ん」

あぁ芽衣ちゃんまた泣いちゃった...警察の人がなにか聞きたそうにしていたけど、うん無理。泣いてる子供に質問なんて...えっ!?するのかぁ。
「芽衣ちゃん…だったかな?どんな風に押し倒されたの?その時にどこか怪我した?血が出ていたり腫れているところは無いかい?」

…それ、心配して聞いてる感じじゃないよね。
知ってるよ、龍ジジと百合さんがよく言ってる「じじょーちょーしゅ」みたいだね。

芽衣ちゃんママが代わりにに答えてあげてます。
「先ほど娘に聞いて確認しましたが、転んだ時に擦り傷が出来た様ですが、その程度です。
この子にとっては初対面の人に否定的な言葉を投げかけられたことのほうが大きく傷ついたようです」

そうなんです。いいとこのお嬢様なんですもの。
可愛くないわね!なんて言葉は、毒矢がグッサリ突き刺さったようなものでしょう。

なのに、
「メイはおひざ擦りむいただけ。大丈夫。
でも、怖いみかんおばさんに連れて行かれちゃった祐介くんは、もっと大変なのね」ですって!
聞きました?いえ、読みました?皆さん。
まだ幼稚園児だとは言え、これが真のお嬢様の心意気。ノブレス・オブリージュっていうやつよ!
よく知ってるでしょ?アニメ動画で見たのよ!

「よ...よくわかりました。実害がありましたらすぐにご連絡いただければと思います」

うーん。よくわかって...るかどうか。でも警察の人は間違ってはいませんよね。
間違ってない証拠に、というか、さすがは龍ジジのいる地域の警察ですね。当日のうちに祐介くんは無事におうちに帰ることができました。