「 何?……どこ。ココ。」

「ここのクラブで シャークがDJしてるんだ。」

中の音が、微かに漏れて…ドウンドウンと刻む 低音が胸を叩く。

青白くチカチカと点滅する 看板の向こうに 同じく青い照明の入口へ続く 細い通路が伸びていた。

クリスマスの夜だから……か?

エントランスには、10代にも見える若いカップルが数人 しゃがんだり、抱き合ったり……。

「 行こっ!」

一歩 出遅れる 私の手首を掴んで……シンはツカツカと 人々を避けて進むと、おもむろにクラブの扉を 押した。

ライブハウスと同じく 爆音が耳に飛び込んできて、ホールは盛り上がりの絶頂を向かえているようだった。

ビートが全身に打ち込まれて、自分の心音さえもかき消されていく。先程の息切れも 手伝って……すぐにトランス状態になりそうな ヤバい気配を感じる。

「 おう。シン、久しぶり!」

「 チャー、5分だけ入れてよ。」

受付の“ チャー ”と呼ばれた、いかにも 遊んでいそうな……金色と緑色の融合…みたいな頭をしたセキュリティの男の子が チラッと私を見る。

「 その子……連れ?」

あっ………。(汗)

ギャル・ミニ・セクシーの総合商社(?)のような中……いつもの デニムと“ BIG4 STAFF ”と書かれた イベントブルゾンの自分……。

髪も無造作に まとめただけのお世辞にもオシャレとは言えない……自分。

私は 思わず シンの陰に自分を隠した。

「チャー。(笑) 俺のに手 出したら殺しちゃうよっ。」

シンは そう言って 私の肩に手を回して、わざとらしく強めに抱き寄せる。

パイナップルの頭のような チャー君は、

「 へぇ~ 」と言って私を もう一度 見て……

「 かわいいじゃんっ! 」

と 人懐っこい 表情を 見せた。

黒スーツのちょっと、怖い感じに見えた 彼が シンの一言で 大丈夫な人になった。

まだ……引きつった顔のままだと思うけど 私はパイナップル君に 笑顔を返して軽く会釈した。

チャー君は ホールの方に親指を 立てて“ 入れよっ”と合図をくれた。


ホールの中央には 大きなDJブースがそびえていて その中心に、シャークと呼ばれるDJがヘッドホンを片手で 押さえながら、拳を振り上げていた。