シンは 前方の座席のブックラックに週刊誌を縦に丸めて突っ込んだ。

表紙の見出しに苦笑しつつも……しれっとアイマスクで視界を閉じた。

飛行機のエンジン音が高くなる。

ホノルルまで 数時間、かなり眠れる。

ほぼ……半年ぶりの1週間のオフに少し心が解放される。

だからか……?

週刊誌のスクープ記事にも腹が立たない。

むしろ……少し、ホッとしたりして……

“ Dーカク Vo・SIN (27) 地元一般女性との間に隠し子!!” の見出し。

「 ……ったく。 相変わらず…人聞き悪いし。
隠してねぇ~つーのっ!! 」

シンは、もう一度…苦笑して 座席で小さくなって 膝掛けを肩からかける。


“ Pure white you ~ from…ash~ ”

を リリースして もう2年近く立つ。

今年の顔…なんて言われた実力派俳優、“ 長瀬 るい ”が主演したドラマの主題歌。

ドラマの視聴率と、

夏香が言った通り……

シンの、この曲に対する強い拘りが DNAーカクテルに また代表曲を生ませた理由になったのかもしれない。



私とシンは、その年に籍を入れた。



だからといって、私たちの生活は……

その距離は……

シンは シンで。

私は 私。

名字が 変わったくらいで……

(笑) そう。 美音にパパができた。

と……いうか、パパに逢えた。

私は、その年に……

お店を ハワイに移して 独立した。

ママと企画した ライスボールのテイクアウトとカフェのお店。


シンの帰る場所が……もうひとつできた。

彼も、きっと そう思ってくれてる……はず(笑)



「 美音、早く飲んじゃって~! パパの飛行機、もう着くよ。

一番に♡ お迎えに行くんでしょ。」

到着ロビーのイスに腰掛けて、足をブラブラさせながら オレンジジュースのカップを手にしている 美音に私は 微笑む。

最近の美音のブームは、何でも一番を つけること。

「 これね~。半分 パパにあげるっ!」

小さな手で私に手渡すカップは ラージサイズ。

「 だからぁ~。 (困) 飲めないって言ったじゃん。
こーゆーの 一番 大きいのは いいよぉー。もぉ……
(-_-;) 」

要らなくなると……半分あげるっ!も 口ぐせ。

自分のしつけのマズさに……ガックリくる。(苦笑)

いつもより ハイテンションで 駆け回る 美音に、ため息をつきながらも……ロビーの床の模様に合わせて
ケン・ケン・パー をする美音が愛しくて……

無邪気な ミニサイズのシンに笑ってしまう。

美音を目で追いかけながら …お店のエプロンをとる。
今日は、半日で店を閉めてきた。

「 あっ!!パパだっ!! 」

「 あ~、もぉ……美音、待って。」

私は、飲み残しのカップやバッグ、エプロンをワタワタと両手に抱えると息を切らせて 美音を追いかける。