暗い廊下に響くシンの声に 翔平君とタケル君も、蒼白い顔で 足を引きずるようにして……近づいてくる。

半乾きの髪……服も濡れたまま……

私たちは、耐えきれない哀しみの淵で、

ただ……ただ涙にもがいていた。

溺れるほどの涙に、翔平君は嗚咽しながら…やっと息をしていた。

「 俺の……せいだ……。」


通り雨は 嫌いです。

もしも……なんてない。

分かっているけれど、やっぱり思ってしまう。

“ もしも……あの時。”

あの通り雨が なかったら……

もっと激しい豪雨だったなら……

不条理な事が起きると人は、自分を責めて “もしも” を 口にするのです。

「 俺が……頭、冷やして来いなんて 言ったから……。」

「 違う。……違うよ 翔平。 それは違う。
もとは、俺が遅刻したから……。」

どうにもならないのに……人は、自分を責めて “もしも ” を口にする。

どうにもならない 命の前で……私たちは ひざまずいて、

泣いて……

泣き続けた。