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休憩にしては 早い時間に 突然開いたAスタの扉に、私は 振り返る。

東京のインディーズバンドの新しいアルバムの宣伝ポスターを 壁に貼り終えたところだった。

「 あ………アレ? タクちゃん。」

「 ちょっと その辺…走ってきます。」

そう言うと 長椅子の隅に置いてあったバイクのメットを掴むと、タクちゃんは ツカツカと表へ向かう。

私と目を合わせようとしない 彼に思わず声を掛ける。

「 タクちゃん…雨、降りだしたよ。」

タクちゃんは 少し頷いたような気がしたけれど…BIG4の ガラス扉を勢いよく開けた。

夏のアスファルトが 雨に濡れた匂いが 微かに漂う。

「 ねぇ…!タクちゃん。」

「 ………何ですか?」

「 ……あ…別に。 ううん。何でもない。」

「 (笑) すぐ、戻ります。」

タクちゃんは、やっとしっかり 私を見て笑った。

最近、閉まりの悪い 重い強化ガラスの扉が 3cmほど隙間を残して…そこに留まる。

私は タクちゃんが颯爽と出て行った後を 閉め直して息をついた。

振り返るとAスタから、シンが出てきた。

「 ……15分、休憩。」

「 …?休憩? 今、入ったばっかじゃん。
シン、タクちゃん出ていったけど…どうかした??」

シンが ふっと顔を上げたその時、たった今 閉めた扉が風圧で割れたかのような……

何かを 散りばめて圧縮したような……

ガシャーーーーーン ドウンッ!!!

高く、ひどく掠れたエンジン音が表で響いた。