「 シン君と翔平君には 人には無い才能があるじゃないっスか。

僕は…僕には…。 自信ないっス。

僕。ベース弾いてるだけですもん。

日本一って… そんなの、自信ないっスよ。」

「 お~~いっ!それのどこが悪いんだよ。
俺だって、ドラム叩いてるだけだよぉぉ~(汗) 」

「タケル君にだって…タケル君にしか叩けないドラムがあるし、それに…色んなセンス持ってるのは タケル君じゃないっスか。
ashのCDジャケット、全部デザインしてるのタケル君じゃないっスか。」

「 おいっ!タク。 お前にだって…お前にしか弾けないベースがあるよ。
それに……俺は その場所にお前が居てくれるから、安心して歌える。
お前がいるから……ashなんだよ。」

「 そーだよっ。どうした?昨日、何かあったか?」

「 うち…僕、一人っ子っスから…。
親父の会社が 中途半端にデカイせいで、色々と。
せめて…僕に才能があればって思いますよ。
東京へ行って、実感したんすよ。
ここ数ヵ月…足、引っ張ってんの僕だなぁ…って。」

「 ん、なこと誰も思ってねぇーーよ。」

シンは長い息を吐きながら 視線を合わせないタクをじっと見つめた。

「 そうだよ。マリッジブルーかよ。メジャーブルー?? ちょっと、頭 冷して来いよ!!」

翔平は 呆れてギターを肩から下ろした。

「 とにかくっ!特別な才能のある人達と僕は違うんです。」

タクは、いつもの可愛い目を 吊り上げて 駄々っ子のように声を荒げた。

「 特別なんてないよ。俺なんか…いっつも夏香にダメ出しされるし…。ミナトさんにだって 洋介さんにだって、止められるの 俺の方だよ。」

「それは シン君が、アイドルじゃないからです。今 以上のアーティストになれるって 誰もが期待してるから、厳しいんですよ。
僕は……
レコーディングは、スタジオミュージシャンですから……。
悔しいっスよ。
練習しても……しても……追い付けなくて。
僕じゃなくても、いいのかなって。」

タクは 拳でアンプを叩く。

「おいっ。やめろって…指は商売道具だろ!」

タケルはタクの拳を 握りあげた。

「 ターーーク。頭、冷して来いって。」

「 不安は…皆、同じだよ。周りが多少、騒いだって、実際 売れっ子になれるかなんて 分かんないし。
冷やかされてるだけ…かな?なんて思ってみたりもするし。
デビューして 数年で契約解除なんて…よくある話だし。
そんなに、急いで先を考えるなよ。」

「 おーーいっ!シンっ!!
俺は、お前の そういう先のビジョンの無い感じを何とかしろっ!って思うんだけど。」

「 ………………。です…よね。(苦) 」

「 大きい夢を手に入れるためには…捨てなきゃならねぇ~物もあるんだよ。失うものも…あるかもしれないっ。」

「 すみません。頭、冷して来ます。」

Aスタを出るタクの背中に、シンがついた溜め息を マイクが拾う。

「 分かってるよ、翔平。分かってるから…悩むんだよ。」