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BIG4の屋上に かけ上がったのは、ライブが終わって一息ついた頃。

まだ 何かと騒がしい入口から距離を置くように、私と鈴ちゃんは こっそり屋上へ続く階段を上った。

花火の広がる 大きな音にライブの余韻から はっと目を覚ます。

屋上の小さな扉はノブが錆び付いていて 回すと、ガガ…ゴン…と窮屈な音がする。

吐く息と共に 重い扉を解き放った瞬間に…鈴ちゃんの頬が 赤い光に染まった。

私と鈴ちゃんは目が合うと クスッと笑って子供のように…両手を広げて屋上を走り出した。

空いっぱいの 花火を…浴びて

悩みも、迷いも…不安も…

一つ一つが 花火と共に弾けていく。

パラパラと溢れる火の粉の残骸に、私たちは叫んでみる。

「 最高ーーーーーっ!! (笑) 」

「(笑) さいっこーーーーーっ!!」

二人の声は、激しいスターマインの音に吸い込まれていく。

夏の匂いにドキドキする。

狂い咲く大輪… 散り行く花びら…

ついさっきまで 咽び鳴いていた蝉の声を忘れて、真夏の夜は 一瞬一瞬が 魂の色彩となる。

真夏の夜。

私と鈴ちゃんは…屋上の柵に身体を委ねて 両手を伸ばす。

花火と星が…近い。


「 ここからの花火、二人じめはズルいんじゃないっ!」

思わず、ハッとして声の主に振り返る。

夏香さんは少し笑って、隣の手すりに両手を置いた。

目の前に堕ちてくる垂れ柳の花火を 真っ直ぐ見つめて 凛としている夏香さんを見ると、あの日の事は…やっぱり、アルコールの仕業か?……と 私なりに、いいように解釈しようとしたけれど…
それは すぐに間違いだったとはっきり分かった。

「 ねぇ、紗奈ちゃん。」

「 ……はい。」

夏香さんの 真っ直ぐな先で、細く長い炎の筋が…ひとつ、またひとつ 夜空へと上がっていく。

「 私、シンのこと……好きでいていいかな。」

「 ……えっ…! 」

何か 吹っ切れたように、夏香さんは 私に笑いかける。

「 諦めようと、何度も思った。」

「 …………。」

「 けれど、自分に素直に…嘘はつきたくないと思った。」

「 …………うん。」

「 ごめんね 、紗奈ちゃん。
私……諦めきれないよ……。」

俯きながら “ ごめんね ” なんて言う夏香さんの頬骨に映る光の密度の美しさに……

私は自然と頷いた。