切れない通話。

離れたくない。

帰りたくない。

ワガママは沢山ある……。

けれど……

あなたを想えば想うほど…伝えられなくて、不器用です…。

「 ところで 紗奈。
私 ashを見てて思ったんだけど 、私もこのまま 同じじゃいられないなって。」

「えっ……?」

「 こうやって、バイトしてるのもいいけど…そろそろ本当に 自分のやりたい事と 向き合わないと。」

鈴ちゃんは バスの窓から差し込む午前の明るい光を 瞳に映して、何か心に決めたように 私を見つめた。

「 “ash(灰) ”……灰になるまで、その道に燃えたいこと、やってみようかと思って。」

「 灰になるまで……やりたい事、かぁ…。」

「私。ネイルの勉強しようかと思って。
タクのお嫁さんになる夢は 少し横に置いといて……(笑)
自分の夢…追いかけてみようかと。」

「 自分の…夢?」

「うん。タクに負けないように…ashに負けないようにってね!」

「鈴ちゃん……かっこよすぎだよ。(笑)!」

「 タクと同じく、今より上を目指したいんだ。
自分の中の上を…目指してみたい。」

「今の自分より、上の自分かぁ…。」


そう…そうなんだ。

東京のashを見て、都会の一角…

翔平君の部屋を見て…

シンの 新しい歌詞を見て…

彼らは 一歩づつではあるけれど 前へと進んでいた。

金沢で待つと決めた 私だけど、そこで止まってはいられない。

同じでは いられないんだ。

私も、前へ進みたい。 今より上へ……

私の目指すもの……って?

私が私らしく生きるって?


“ あなたが、あなたらしく生きるのが好き。”

シンの歌詞を、 私は思い出していた。