“ 辛いのは きっと僕の方…。”

嘘だよ。

私の目から ポロポロと涙が こぼれ落ちた。

私の方だよ。 ……絶対に。

東京にいるのに、近くにシンがいるのに……逢えないのは……

私が シンを好きになりすぎてるせい…。

シンに甘えられないのは……いつも、甘えてるから、わからなくなってる。

甘えすぎてる……

傷ついてもいいと思える恋なら、素直になればいい。

鈴ちゃんの言葉を思い出す。

“ 別れる時が来るのなら 全力で傷つくつもりだよ。それでいいって思ってる。”

全力で ぶつかって…傷ついてもいい。

私は 涙を拭うと スマホの電源を入れた。

午前4時すぎの電話…金沢にいた頃の私たちには不自然ではない時間帯の着信だった。

シンの気まぐれに掛かってくる “ 帰るよ ”コール、なんだか ついこの間の事なのに…懐かしい。

呼び出し音に ドキドキが混じってやたらとそれが 長く感じる…。

私は、ただ黙って シンの声を待つ。

もう、出ないのかと 半分諦めたタイミングで、呼び出し音が途切れて…

シンを感じる。

「 はい……。」

低い声の先の言葉を待つ。

「 おせぇーよっ!! なんで…もっと怒って ぶつけて来ないんだよっ。」

「 ………そんな…勝手なこと、言わないで!」

「 ……もう、好きじゃないの……?」

「 …………。好きじゃなかったら……逢いに来ないよ。ここへ……来ないよ。
シンに……逢いたかったから。シンの傍にいたかったから……一緒に眠りたかったから……。」

ー Sleep with me.…一緒に眠ろう。 ー

「 ……紗奈……。
今日は、紗奈が足りないよ……。」

泣き顔を悟られないように…できるだけ鼻で息をしないように……返事。

ー Don't let go……離さないで。 ー

「 …………離さないで……。」

「 ……(笑)
まだ……新曲、配信してないよ。」

「 シンのことは……なんでも分かる(笑)」

「 俺、謝らねぇからなっ! 謝るようなことはしてないよ。」

「 してたじゃん。」

「 …………してねぇしっ!」

「 夏香さんと、キスしてたっ。」

しばし……沈黙かと思いきや…

「 …………。 ごめん……。」

速攻……謝るシンに、おかしくなる。