No border ~雨も月も…君との距離も~

「 ……。まぁ……わかるかぁ…。
完璧な黄金比の顔……だわね、アンタ……。
身長……肉厚……顔面国宝ときたら…確かに、
一回、喰っとこうかっ♡」

ジェイが 冗談混じりでシンのベルトに手をかけた時…。

バタンっ!! バンっ…

入口の扉が 開く。

「 あら……もう一人、いい男が戻ってきた。」

「 立てっ……! 」

翔平は 一直線にシンの前に立つと、ジェイは唇を尖らせて 二人を交互に見る。

「 ……紗奈は?」

「 お前には、会いたくねぇーって。」

「 あ“ん?!!」

「 会いたくねぇーし。 会わせたくねぇーし。」

「 ふ~ん…。」

「 ふ~ん、じゃねぇだろーがっ!
紗奈ちゃんに 謝れよっ!」

「 謝らねぇ~よっ。 全然っ!謝らねぇっ。
俺、悪いことしてねぇしっ。
ったく、なんだよ……知らねーよっ!!」

「 勝手にしろやっ。」

「 オイッ、翔平っ。俺、お前のこと殴っていい?めっちゃ…腹立つわぁっ。」

「 こっちのセリフだよっ。イラつくわぁっ!!」

シンと翔平は、揉み合いながら店の外へ 転げ出る。

最上階のフロアには、エレベーター待ちの別の店の客が数人、二人の揉み合いに目を見張る。

すでに シラフの翔平は、シンのアルコールで ぐでんぐでんの拳を 簡単に遮ると…シンの顔面ギリギリで拳を止める。

「 二人とも止めてくださいよっ! メジャーですって。 こーゆーの…たぶんヤバいですって。」

タクが小声に力を込めて シンの肩を押さえる。

「よぉ~♪ お兄ちゃんたち、熱いねぇ~。
女の取り合い?! 若いねぇ~。
YOUたち、回しちゃいなぁ~♪ 」

酔っ払いに 酔っ払いが絡むと 訳が悪い。

午前……4時過ぎ。

「 あ“~~?!! おっさん、何っ!!(激怒) 」

二人で声を合わせて、サラリーマン風のその男を睨み返す。

「 だからっ!二人ともっ! メジャーですってっ。」

タクとタケルが 二人の間に入って、ジェイがサラリーマンを エレベーターに詰め込んだ。