夏香は 翔平が 走り去った扉に、両手を広げる。

タクちゃんに 肩を抱かれた鈴ちゃんは、そんな夏香を見て…力なく シンに振り返る。

「 シン………

紗奈に 謝って。 お願い…謝ってあげて。」

「 …ああ。 わかってる。」

シンは、携帯に手を伸ばす。

「 どうしてっ!」

夏香の声が 震える。

「 …どうして、シンが謝らなくちゃいけないの?
先に 謝らなくちゃいけないのは 紗奈ちゃんの方だから……!」

「 フッ……何? なんで……?
意味 わかんないしっ。」

鼻で笑う鈴ちゃんに、夏香の声が さっきよりも怒りで震える。

「 これっ!!
これでも、二人とも 紗奈ちゃんを 庇うの?!!」

夏香は いつかの公園で 翔平と抱き合う二人の写メを、シンと鈴ちゃんの前に 突き出した。

「 二人とも、紗奈ちゃんが翔平にも いい顔してるってこと、知りもしないで……。

よく 庇えるね。

あの子、ashを壊すの……

私の大事なashに 手を出して欲しくないの。」

「 夏香さん……。それは… 」

「 私は、シンも翔平も すごく大切で。

ashの4人が…すごく大事なの。

わかって……。

シンへの気持ちだって、ずっと…ずっと押し殺して…… 」

「 もう……いいよ、夏香。わかってるよ。」

「 行かないで……私、苦しくて死んじゃうよ。」

シンは、ポロポロと涙を溢す 夏香を ソファーに座らせると、ジェイの持ってきた水のグラスを 握らせた。

「 ……飲みすぎだよ。」

「…シン…ごめん。こんなことしてごめん…。」

夏香はシンの胸に 顔を埋めた。





なぜだろう……。

人を想うって、どうしてこんなに行き違うのだろう。

どうしてこんなに、上手く噛み合わないのだろう。

強すぎたり……

引きすぎたり……

重すぎたり……

軽く見えたり……

本当は、それぞれの好きが、真っ直ぐなだけなのに。

あの時の 私たちは、傷つけ合いながら……

それでも 必死に誰かを想ってた。

想えば想うほど……

誰かを 傷つけた。

恋も夢も、手に入ると信じて……

誰かを想って、誰かを傷つけた。