No border ~雨も月も…君との距離も~

「 (笑)冗談ですってぇ。でも、鬼になりそうなのはホント。」

「 地獄なだけに……(苦笑) 」

「 あ~っと。それから…小娘じゃなくて、夏香って言います。(笑) 」

「 なっちゃ~ん。 私、あんたみたいな子 好きよ~っ! 好きな男のために鬼になっちゃうような女。 嫌いじゃないわよ♡ 」

そう言う ジェイの背後。

ボトルが並ぶガラスの棚に……今、一番会いたくない 彼女が映る。

嘘……? 紗奈ちゃん?

幻~~?

薄暗い店内……飲みすぎた? 回っているはずのない原色の照明が グルッと回る。

幻覚? 錯覚?

今、あの子に……あげたくない。

シンを あげたくないっ。

あげたくないよっ。

「 ジェイ……。鬼に なろうかな…私。
てか……なっちゃっても 止めないで……。」

夏香は そう言って 、一点を見つめて立ち上がると ソファー席に座るシンに向かって 身体ごと倒れ混むようにして しなだれかかった。

取られたくないよっ。

足元がふらついたのは アルコールのせいでもあるけど、 ワザとだったと思う。

そう……鬼のせい。

何も 知らないで……私の気持ちも知らないでっ!

シンに愛されてる…“ pure whiteの君 ”

そんなの……嘘だよ。

私を こんな気持ちにさせる あの子も 鬼だよっ…。



夏香は シンの膝に 腰を下ろすと……

両手で彼の頬に触れて

激しく…唇を吸った。