「 もしもし? シン……? 」

「 紗奈ちゃん? 私……夏香。
ごめん。 シン…今、忙しくって、しばらく手が放せないのっ!」

私は シンの電話から、女の人の声が 聞こえたことに焦って 声を 詰まらせる。

舌を 噛みそうになる……。

しかも……夏香さん。(汗)

「 …あっ。ごめんなさい…また、後でかけ直します。」

ただ シンの声が聞きたかっただけ、なんて…言えない。

「 ねぇ…紗奈ちゃん。 シン、ここで遊んでるわけじゃないんだぁ。」

「 ごめんなさい。」

電話の向こう側の夏香さんが、短いため息をつく。

「 彼女…だったら、もう少し気を使ってあげてもいいんじゃないかな……。」

「 …………。」

夏香さんに 言われて初めて 気がついた。

私って……

自分の事ばっかり。自分の想いばっかり。

「 毎日、スケジュールは かっ詰めだし、新人だから そこら中に 気を使ってたりするし。
なんでもない電話は シンの事を 思ってるなら止めてあげて。」

そんな……

「 そういうの…気づいてあげて欲しいの。
彼女なんでしょ……。」

彼女だから……

好きだから……

逢いたいから……

逢えない……から。

シンと繋がる、こんなにも薄っぺらい液晶画面に頼ってしまう。

見えない電波に すがってしまう。

夏香さんなら……きっと そんな気配りが出来るんだろうな。

夏香さんなら……

あれこれ駆け巡る 想像に…胸が苦しくなる。

シンへの想いが…募りすぎて 苦しくなる。

募りすぎた愛情が…何か 別のものに変わってしまうのではないかと 自分自身に ゾッとする。