目が覚める時、夢と現実が混ざって不思議な感じになるのが好きだ。



でも、それはすぐに消えてしまう。



まるで手のひらにある水が隙間から零れていくように。








着替えて、顔を洗って、部屋の空気を入れ換えて、下に降りてトーストを口に入れようとする時には、夢の内容を思い出そうとしてもほとんど忘れてしまっている。



5W1Hのない、ぼんやりとした背景しか残っていない。



お母さんはもういないし、お父さんはまだ単身赴任中だ。



家の中は夜遅くまで誰もいない。



その方が好都合だ。



お母さんは、紺谷家の噂を垂れ流すヨリのお母さんが大嫌いだから。



まあ、垂れ流しの元はわたしとヨリだけど、そんなことにヒステリックなお母さんは気づかない。



のんびりとワイドショーを見る。



土曜日のニュースは、殺人や強盗、火事のような物騒な事件でも何でもないことのように聞こえる。