「…そうだったんですか」
「この店が輝くんはさびれているっていってたけど私はそうはおもわないよ。
確かに輝くんのおじいちゃんがやっていた時よりも人がすくないのかもしれないけど
いつも店内綺麗にされているし、本も見つけやすいし、輝くんに聞いたらなんでもおすすめの本おしえてくれるし…常連さんは皆 この場所が大好きでさびれてるとかだれも思ってなんかいないんだよ。
私は輝くんがつくったこの場所が大好きになっていくと同時に輝くんのこともどんどんすきになっていったんだよ」
「翔子さん…」
今まで自分がこの店にやってきた全ての努力をみとめられてとても嬉しかった。祖父が作ってきた古本屋を目指していたつもりだったが、自分でも気づかないうちに僕自身が新しい古本屋をつくっていたようだ。どうやら僕はいい現実にも目を向けず、悪い夢ばかりをみていたらしい
「翔子さん…僕、翔子さんのこと好きなんです」
「えっ!そうなの?私絶対片思いだとおもってたんだけど…」
「そんなわけないじゃないですか!
僕こそもう絶対かなわないとおもってたんですよ」
「…そうだったんだね…」
「翔子さん。
僕とつきあってくれますか?」
「もちろんだよ輝くん」

翔子さんとはれてカップルになって1時間後
古本屋は閉店の時間となった
シャッターを閉じたあと、新しくはいった本たちを本棚にいれることにした
ダンボールから次々と本をとりだして
それぞれの居場所へとならべていく
10ぷんほどかかって最後の1冊となった
なにかをはかったかのように最後の1冊はあの恋愛小説だった
全て並べ終わって電気を消すスイッチをおしにいく
さっきまでこびりついていたさびも
ほんの少しの間におちてしまったらしい