彼女はどうやらこのマンションに住んでいるらしい。
声をかけようと口を開きかけた時、彼女が振り返った。

「わっ!」

驚いた彼女の声に、心臓が止まりそうになる。

「ど、どうしたの!?」

何も答えない俺を見て、彼女はエレベーターから降りてロビーのソファに座った。

すると、俺のお腹が鳴った。

「もしかして、お腹空いてるの?」

俺は首を縦に振った。

「……わかった。何か作ってあげる」

彼女は俺の手を引いて、もう一度エレベーターに乗り込み、7階のボタンを押した。


「散らかってるけど気にしないでね」

女の人にしては物が少ない気がする。
統一された色合いで、すごく落ち着く部屋だ。

「適当に座ってて」

そう言い残し、彼女はキッチンに立った。

俺はテーブルの近くに正座して、料理ができるのを待つことにした。



「はい、おまたせ」

テーブルの上にオムライスが置かれる。

すごく美味しそうだ。

手を合わせて「いただきます」とボソッと呟いた。

「どう? 美味しい?」

彼女の問いかけに俺は静かに頷いた。

「よかった」

安心したように彼女はそっと息をついた。