メインの料理を食べ終え、デザートが運ばれてきた。

「晴日のちょーだい」

まだ許可していないのに、勝手にすくって俺のアイスを食べた。
仕返しに、俺も無言で彼のプリンを勝手に食べてやった。


「ねぇ、晴日」

「なに?」

「どうしてなにも聞いてこないの?」

俺が聞くのを待っていたのか?
いや、そんなはずはないと思う。

聞いたところではぐらかされるだけ。

「紫苑が話してくれると思ったから。紫苑なりに段階があるんじゃないかなって、ずっと待ってた」

「うん。そうだと思った。やっぱり晴日は晴日だね」

「……今お前が伝えようとしていることは、お前にとって幸せな選択なんじゃないのか? 俺はお前がなにを言おうと受け止める覚悟はできてるから」

隣にいる彼女も辛そうな表情をしていた。

だいたいは察してはいるけど、彼の口から直接聞きたい。

「両親がいなくなって、晴日には大丈夫だって嘘ついた。でも本当は家を追い出されたんだ。頼れる親戚もいないから、歩き続けていろんなところをさまよってた。そして、お姉さんが俺を助けてくれたんだ」

苦しんでる親友を助けてやれない俺は、
一体コイツのなにを見てきたんだろう?

「それからお姉さんと一緒に暮らしてて……この前、正式に付き合うことになった」

「なにもしてやれなくてごめん」

「晴日はなにも悪くない。自分を責めないで」

紫苑が最近明るくなったのは、全部彼女のおかげなんだな。

「紫苑を助けてくださり、ありがとうございました。これからも彼をよろしくお願いします」

「こ、こちらこそ…」

「侑李ちゃん困ってるじゃん! 晴日は俺の父さんか何かなの?」

「まあ、保護者みたいな存在かな」

「自分で言う!? 否定はしないけど」


さっきまでのぎくしゃくした空気はなく、ふんわりとやさしくあたたかな空気に包まれていた。