桜がちょうど満開になろうとしてる頃に私は、この高校へ入学した。
私がクラス分けの表を見てると1人の男子が話しかけてきた。
「なぁなぁー、お前って1年?何組?」
めんどくさいながらも私は
「2組」
そう答えた。たったそれだけの会話だったのに、それだけで済んだはずなのに…なんで私はいつも同じことを繰り返すのだろう…
「おぉー、俺と同じクラスじゃん。場所分からないから案内して~」
「は?同じ新入生なのになんでお前を案内しなきゃ行けないの?」
咄嗟に口から出てしまった言葉。もう取り返しはつかない。やってしまった…
「お前男かよw」
その一言にむかついた私はそいつの胸ぐらを掴んでしまった。最悪なことにそいつは私よりも背が高く私の方に引き寄せる形になった。
「誰が男だよ!」
耳元で叫んだ
「おーこわっ。俺、桐原竣な。1年間よろしく!」
「誰がお前とよろしくするか!」
というやり取りから始まった私の高校生活。嫌な日常しか待ってない予感がした…

と、ここで自己紹介。私は、栗原凜寧(くりはらりんね)。入学したてのホヤホヤ1年生だ。性別は名前から想像するとおり女だ。身長150未満でセミロングの着痩せタイプ。一見、傍から見ると普通より少し可愛いぐらいの類に当てはまるのだろうが、私には1つ問題がある。それは性格だ。性格は一言で表すと、男。ひとつ言っておくが、至って性同一性障害では無い。好みのものや趣味だってちゃんと女らしい(?)はず…だが、口調が悪いのと短気なのと力が世間一般の男子高校生には劣るもののなかなかに強い。さすがにこの力は、自分でも並外れているという自覚はある。そんなこともあり、私は、小中と男子扱いされることが多かった。冒頭での「男かよ」という言葉は、私にとって特に嫌いな言葉だった。まるで当たり前かのように言われる言葉に私は、「ぶっ飛ばすぞ」と言いながらも内心傷ついていた。だから、中学卒業と同時に地元から少し離れた高校で新たに一から始めようとした。だが、それも見事に失敗した。読者の皆さんは冒頭の会話を覚えているだろうか。私は、先程も言ったように短気なのもあるが、加えて重度の男子嫌いなのだ。なら、なぜ女子校を選ばなかったのか。それは私の個人的な偏見による都合だが…

「ガラッ」
教室のドアを開けた。既に教室で座っていた生徒の視線が集まる。
私は、少し恥ずかしく俯いてしまった…私は人とのコミュニケーションが苦手な方だ。だから、こうやって人から見られていると意識すると恥ずかしくなり顔が赤くなってしまったりする。そんな私は、大人しく黒板に貼られた席の紙を見て確かめ自分の席に向かった。私は、自分の席に向かって座ると、カバンを置き入学式が始まる招集がかかるまで、と思いカバンの中から小さな単行本を出した。私は本が好きだ。本の中は色んな知識が詰まってる。まぁ、知識と言っていいものなのか分からないものも混じってるけど…そんなわけで、読みかけのページを開こうとしたその時。まだ人がいなかった前の席にガヤガヤとした音と共に人が来た。誰かと思い入り込んでた本から少し視線を外し前の席を見た。その瞬間の私の顔は見れるものではなかっただろう。まさかと思った。そして、願うものなら夢だと信じたかった。案の定、先程私を怒らした桐原竣だった。心の底からこいつを呪い殺したいと思ったのはこの時が最初だった。しかし、至ってそれは「最初」であった。当の桐原竣は、私に気付かなかったので、私は視線を本に戻し、そのまま本を読み続けた。その後、黒板に書かれてた通りの時間に男女別で出席番号順に並び体育館へと向かった。そして、入学式が始まり、校長の長い話が終わり、あいつに気づかれることなく教室に戻った。でも、時間が経過すると共に後ろが私ということは気づかれるわけで…HRで、担任の自己紹介と軽めの挨拶が終わった。因みに私のクラスは中城美玲という女の先生だった。この女の先生は学校でも評判の良い先生らしい。担当教科は世界史だ。楽しくなりそうな予感がする…

先生の自己紹介も終わり、生徒の自己紹介へ移りだした。ポツポツと自己紹介が進んでいく。そして、ついに桐原竣の番になった。勢いよく立ち上がり、
「〇〇中から来た桐原竣だ!特技はスポーツ全般!1年間よろしくな!」
そう言い、今度は勢いよく座った。(誰がよろしくするか)と心の中で突っ込んでいた。そして、次は私の番だ。
「✕✕中から来た栗原凜寧です。趣味は読書。1年間よろしくお願いします。」
この簡素な自己紹介は、みんなには陰キャと思われただろう。まぁ、その方がわたし的には都合がいい。なんてったって、陽キャと思われ絡まれるより陰キャと思われた方が絡まれないからだ。私は、小中と明るい陽キャで通ってた。おかげで話しかけられたくないやつから異常な程に絡まれた。絡みたくないやつと3年以上絡むなんて地獄でしかなかった。だから、その経験を踏まえて静かに目立たないように過ごそうと思ったのに…こいつのせいでめちゃめちゃになる予感しかない…
穏やかな日を願ってこの学校を選んだのに、私はなんでいつもこうなるのか…ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙!!と心の中で叫んだ。
そして、授業が始まった
私は普段通り、授業に参加し放課には本を読み…と穏やかな日が待ってると願いたかった。
でも、実際は違った
放課毎に桐原竣がクラスをうるさくする。これじゃあおちおち本も読んでいられない。(あぁ…私の学校生活が…)そう思っても仕方ないだろう。そんな中、私に話しかけてくれた子がいた。水城阿仁(みずきあに)という名前は可愛いが見た目はさっぱりとした高身長の女子だ。入学式の次の日に話しかけに来てくれた。クラス発表の時のことを見て気になったらしい。あれを見ても私と話してくれるなんて優しい…ところが、一緒にいる中でわかったことは阿仁は優しいんだがとてつもない天然でしかも勉強がからっきし出来ない。どうやってこの学校に入ったのだろうと思うほどだ。はぁ…ため息しか出ない…

「凜寧〜」
放課になり本を読んでると阿仁が席にやって来た。
「どうしたの、阿仁?」
「聞いてよ凜寧!また竣がさ〜・・・」
あー、また桐原竣の話かぁ…
「阿仁、またあいつのこと?」
阿仁はあたしが唯一普通の口調で話せる友だ
「あんな嫌な奴のこと私に話さんといて」
「そんな事言わないでよ〜」
阿仁は桐原竣と同じ中学の出身で色々知ってるらしい
「で?阿仁は毎回毎回竣に嫌なことされてよく黙ってられるね」
私なら絶対無理、と言い捨ててまた本を読み始めた。その時だった。私の座ってる椅子に誰かが思い切りぶつかってきたのだ。
“うぉ!”
“いてっ!”