入店して、3か月。4か月に入った秋の始まり。
シーズンズでナンバー1に手が届きそうになった秋。
金木犀の香りが香って、秋を告げた時、わたしはもう新人ではなくなっていた。

忙しそうに指名客の卓を回る。

バックて一休みしようと思った時、見慣れた後ろ姿を見つけた。

パソコン画面を真剣に見つめていた視線がこちらを見つめた。

「さくら!今日も頑張ってるな!」

「社長!おはようございます!」

あれから光とはたまにご飯に行ったり飲みに行ったりしていた。
それはふたりの時もあれば誰かがいる時もあって、皆の前では光はわたしをさくらと呼び、ふたりの時は夕陽と呼んでくれた。
この世界でただ1人わたしを本名で呼んでくれる人だった。
わたしたちの関係はただの社長とキャスト。
でもひとつだけ変わったことがある。
わたしはふたりで行ったディズニー以来、もう自分の気持ちを偽り続けることが出来なくなっていた。

‘光が好き’

片時も外さなかった羽根のついたネックレスが揺れる。
それは切ない恋の始まりだった。