「さくらさん、お願いします」

「はい」

シーズンズへ入店してから3か月が過ぎた。
過ぎてしまえばあっという間で、入れ替わりの激しい夜の世界。新しい女の子も入ってきたし、わたしの前に入っていた女の子は何人か辞めたりもした。水のように何もかもが流れていく世界。
入店して3か月は実に色々なことがあった。
指名客も増えてきて、同伴もこなし、それなりの売り上げもあげてきた。
指名客が切れることもあったし、1回きりで来客してくれない人もいた。
それでもさくらは指名が切れない方だよ、といつか高橋が言った。
思えば長く通ってくれるお客さんは、わたしに好きや嫌いの色恋を求めないお客さんが多かった。


「さくら~!!久しぶり~!!」

「遠藤さん~お久しぶりです~!」

「今日は沢山お客さん連れてきたよ!さくらの仲良い子場内入れちゃって~!」

遠藤は建築関係の会社の社長をしている。その繋がりで飲みに行くときは社長連中とつるむことがとても多い。毎回4~5人の社長を連れてくる。個人的には飲みにはあまりこないが、人数と華やかな人脈で売り上げものばしてくれる非常に楽なお客さんだった。もちろん指名がかぶっても快く送り出してくれる。

その他にも、来るときは必ず同伴して行ったことのない高級料理屋さんに連れて行ってくれる河野社長。この人も同伴の時は必ず連れを連れてきていて、わたしの方でも女の子を用意してくれと頼む。

石田さんはわたしのおじいちゃんと言っても不思議でない年齢の人で、定年前に努めていた会社の相談役として籍を置いていた。おじいちゃんという歳なのにそれを感じさせず、男の人として魅力のある人だった。

さくらのお客さんは年齢層の高い社長さんが多いな、と高橋はいつも言っていた。
そして皆こぞってわたしのことをキャバ嬢らしくないキャバ嬢と言った。
わたしの長く続くお客さんは小笠原さんと思考の似ている人が多かった。