【完】さつきあめ

車のスピードが上がっていく。
その車内でわたしたちは色々な話をした。
それはまるで付き合いはじめの恋人のように。でも恋人では決してない。その事実が少しだけ寂しくさせた。

「へぇ~夕陽って4月に上京してきたんだぁ~
俺なんかずっと関東に住んでて生まれも関東だから羨ましいなぁ~」

「ほんと田舎だよ!なんもない!だからこっちにきて高いビルが沢山あってびっくりした~田舎者って感じだよね~…」

「でもなんかいいじゃん。冬に雪がふるとかめったにないし、雪とか憧れるんだよね」

「雪なんて、邪魔だし寒いしなんもいいことないよ。
ねぇ、光って何歳なの?」

「俺?26歳。早生まれだから3月になったら27歳になるよ?」

「え、もっと若く見えた。若作りなんだね…
わたしも誕生日3月。3月になったら19歳になる」

「若作りってお前…。
てか俺と夕陽って8歳も年齢違うんだなぁ~…俺まじおやじじゃん~…」

「おやじじゃないよ!光は、光はかっこいいもん!!!」

力説する自分に思わず恥ずかしくなる。
光はハンドルを握りながら、にやにやと「かっこいい~かぁ」と意地悪そうに笑う。

「3月生まれって損だよね。同級生でも4月生まれと全然違うんだもん。俺小学校の時背ぇ1番小さいのがすっげぇ嫌だった」

「あ、あたしもだよ!」

「へぇそうなんだ。でも夕陽いまおっきいじゃん。身長何センチ?」

「163センチ。今日もショップのお姉さんに手足が長いからもっと背が高く見えますよね~って言われてちょっとショック。女の子は小さい方が可愛いって気づいたのは高校生になってからだよ!背ぇ小さいだけで女の子らしく見えて可愛いんだもん!美優ちゃんとか150センチなんだってぇ!!ほんっと可愛いと思う」

「えー俺背高い女のが好きだよ?
俺182センチいまあるから、美優みたいに小さすぎる女と並んだらほんっと小人みたい!」