わたしのキャバクラ嬢としての一か月はあっという間に過ぎていった。

フリーに着いて連絡先を交換し、本指名で返ってきて、同伴して毎日は慌ただしく過ぎる。
1日がこんなに短いものかと思えるくらい、お店に出て指名の席をぐるぐる回されて、合間を見てフリーに着いて、ネットや雑誌に載せる撮影があって、とにかく目まぐるしく過ぎていった。

名刺を配れるだけ配り、営業命のキャバ嬢らしく毎日携帯は手放せないでいた。
週に1回ある休みは美優や綾乃と遊んだり、仕事もプライベートも充実してきた。苦手だったお酒も人並みに飲めるようになって、いくら飲んでも酔っぱらっても顔色に全くでないわたしを見て高橋は「生まれつきお酒強いのかもな」と言った。

いままで経験のしたことのないことばかり。
美味しい物を食べて、見たことのないようなお酒を飲み、可愛いともてはやされ、そんな今まで知らなかった世界は目に映るものすべてをきらきらと輝かせているように、思えた。
そのきらきらと見えるものの多くが偽りだとはまだ知らずに。


「いくらさくらを場内しようとしてもできないって浅井さんが嘆いてたよ」

「はるなちゃん…本当にごめんね」

「仕方がないでしょ。あんた指名多いからね。もぉ浅井さんにさくらとあたしダブル指名にすればって言ってやったら名案だって」

「いやいやそれはない…」

「でもあんたとあたしどっちも指名多いからどっちも着けなくて結局ヘルプが付く羽目になるのよね…」

「あはは!」