「さくらー!!」

人懐っこくわたしの側にやってくるこの男も。

「さくらって、社長の目にはさくらしか見えないんですかぁ~?!」

「あぁ、綾乃と美優もおつかれさん!俺はキャスト皆大好きよ~!」

「調子いいのぉ!!!それより明日からはもうシーズンズに来ませんよね?!社長の付け回し大嫌いだからやめてほしいんですけど!!」

「はぁ~?!俺の付け回しは天才的なんだけど
ほんっと憎ったらしいなぁ、美優は!
まぁ深海もわかってくれたことだし、明日からは来ないよ」

「あぁ良かった。あたしもあんたに見られて接客するのは勘弁よ」

「綾乃まで、ほんっとシーズンズのキャストは可愛くねぇーな!」

「社長明日から来ないんだ…。残念」

思っていたことを口にしてしまってからはっとした。
美優はにやーっとした顔をしてるし、綾乃はやれやれとあきれ顔。
でも黒服として働く光も、凛としていて、悔しいけれどかっこよかった。

「さくらだけだよー!」

光は躊躇いもなくぎゅーっとわたしを抱きしめる。突然のことで体が硬直して、体温がぐんぐんと上がるのを感じる。…この人は自然にこんなことが出来ちゃうから女ったらしなんだろう。

「あ!そうだ!さくら!この間の賭けのこと覚えてるよね?!」

小笠原が1週間以内に店にくるか賭けていた話だ。
結果的には光の言う通り小笠原は1週間以内にお店に来てくれて、賭けは光の勝ちになったんだけど。