「楽しかった~!」
「あたしも!すごく楽しかったです!入江さん本当にありがとうね!」
「これからも1セットしかいない主義は変える気ないけど、さくらちゃんを応援するよ!」
「ありがとうございます!」
手を振りながら入江を見送る。
タクシーが消えていくことを見送っていたら、携帯にラインが入る。
‘1時間後くらいに飲みにいくね!’とこれまたフリーでいつか着いたお客さんからのラインだった。心の中でガッツポーズをして、エレベーターに乗り込んだ。
戻ってきた早々に光に呼び止められる。
「さくら!」
「あ……」
「おつかれさま!いまの客、綾乃の客の枝だろ?良いお客を捕まえたな。小笠原さんといいさくらは太い客を掴む才能があるんだな!」
な、なによ。わたしは怒ってるのに、嬉しそうな顔をして近づいてきて、褒めないでよ。そんな顔をされるとほだされていきそう。…わたしは怒ってるんだから。
「別に太い客だからとか関係ないですから。
お客さんは平等だしっ!」
可愛くない言い方。褒められたら素直に喜べばいいのに。
「へぇ~」
だからそのすべてを見透かしたような目で見るのはやめて。
「社長、はるなさんの付け回しどーしまっすかぁ?
あ、さくらお疲れ!今日も指名すげぇじゃん!」
高橋がやってきて、褒めてくれた。
「はるなの付け回し?あぁいま4卓指名かぶってるんだっけ?」
4つも指名かぶってるの?!
すごい…やっぱりナンバー1だ。感心していると光は高橋とわたしを交互に見た。
「いや…いまヘルプが欲しいのは8卓で、その………」



