【完】さつきあめ

昨日は喜んで欲しかったことも、今日は全然嬉しくない…。

「…なんでもしますよ!
あたしは…はるなさんのヘルプだって、はるなさんと同じ卓に着くことだって何も怖くありませんから!だから社長の好きなようにしたら?!あたしはそんなに弱くない!
その代わりあたしがちゃんと出来るってわかったらさっさと自分の仕事に戻ってくださいね!ここのお店の店長は深海さんで、社長じゃないんだから!!」

きっぱりと言い放つと、光は少し嬉しそうににやりと笑った。

「思ってた以上かな…」

「深海さんは絶対に悪くない!
悪いとしたら弱いあたしの方だわ!だからあたしが絶対それを証明してみせる!
じゃああたしもセットの予約入ってるんで!また後で!」

光に背を向けて走り出す。
何だろう、この闘志みたいな気持ちは。
アップで!とヘアメイクのお姉さんにお願いして、携帯を取り出して営業ライン。
勿論ヘルプもフリーも上等でこなすつもりだったけれど、指名だっていっぱい呼びたい。…光が付け回しをするなら尚更。自分を認めてもらいたい。そのためには頑張らないといけない。

ヘアセットを終えてお店に向かうと、すぐに光に呼ばれた。

「さくら、指名だ」

「へ?」

「5卓。1名様だ、早く」

「は、はいっ!」

今日はヘルプ回り上等な気持ちでいたので、拍子抜け。