【完】さつきあめ

「きゃはは~社長ったらぁ~もぉ~」

次の日出勤したら、宣言通りお店には光がいて、何やらはるなは機嫌良さげに光と喋りながら小突く。光もまんざらではないような顔をしていたので、それが昨日の怒りをさらに大きくする。
出勤早々嫌なものを見てしまった。
2人に気づかないふりをしてその場を去ろうとしたら、にこちらに気づいた光が「さくら!」とわたしを呼ぶ。
振り返ると、いつもと変わらぬ優しい笑み。昨日怒っていた人とはまるで別人のよう。しかしその光の態度にさらに怒りに火をつける。

「さくら、おはよう!」

「おはよ…ございます…」

「あ~!あたしセットの時間だぁ!!じゃあね社長!あとで~!」

ふんっとわたしを一瞥して、はるなはその場を離れる。
光はいつも通りわたしの前にやってきて、頭をぽんっと小突く。いままでは嬉しかったことが今日は全然嬉しくない。不機嫌そうな顔をわざと向けても、わたしの考えなんて光にはすべてお見通しだろう。

「さくら、なんか怒ってるの?」

「別に、怒ってませんけど」

「え~…!怒ってんじゃん!ほんっとわかりやすい奴だなぁ~!」

「そうやっていつも茶化して…優しいふりして誰にでもいい顔しちゃってばっかみたい!」

怒りに気づいて欲しくてわざとこんなことを言ってしまう自分は子供みたい。

「そんな怒るなって!
そういえば昨日小笠原さん指名で来たんだって?
やっぱり賭けは俺の勝ちだね~!やっぱり俺ってすげぇや!
さくらに何してもらおっかなぁ~!」