好きであろうとしている。違う、そんなんじゃない。
無理やり好きでいようとしているわけがない。
自分の気持ちなんだから、自分が1番わかっているのだから。

「好きでいなきゃいけないって思ってるのかな」

「何それ、意味わかんないよ…」

「社長をずっと好きでいなきゃいけないって思いこんでんだよ、お前は。
でもな、人の気持ちは環境や色々な要因で変わっていくんだよ?」

「止めてよ………」

「自分の本当の気持ち隠して自分にまで嘘ついてたら辛くなんないか?」

「高橋くん本当に何言ってんのかわかんない!さ、早く仕事にもどろ、お客さん待たせちゃってるし」

わたしは高橋を振り切り、ホールへ出る。
心臓がドキドキ言っている、胸をおさえてもおさまってくれない。
自分の気持ちを隠して…自分に嘘をついて…さっき高橋に言われた言葉が何度もこだまする。
ホールに出てちらりと高橋を見たら、いつもと変わらず平然と仕事をこなしている。

「…くらちゃん?さくらちゃん?!」

「あ、ごめんなさい!」

「どーしたのー?何か元気ないねぇ」

「いや…そんな事ないですよ?」

「何か今日は特別に元気ないみたい。
THREEやばいの?」

「いや、そんな事ないけど…」

全然別の事を考えていたのに、お客さんには違って見えたみたいだ。

「有明社長が辞めたってのは噂で他の系列の女の子から聞いたけど、やっぱ七色きついの?」

「いや、本当にだいじょうぶだと思います…お店は…多分…」

「何か女の子が大量に辞めたって聞いたけど、さくらちゃん辞めないよね?!
もし七色辞めるなら絶対次のお店教えてね?俺さくらちゃんと話すためにTHREEに来てるんだからさー」

にこりと微笑みを作る。
違う事を考えているなんて、目の前のお客さんに対してなんて失礼なんだ。
頭を切り替えなくちゃ。