光と出会って、初めて人に愛されてる事を願い、そのためにその人に必要とされる事を望み、生きてきた。
1年前では叶わなかった願いが手を伸ばせばそこに掴めるところまできてるのに、その手を掴む事が出来なかった。

「おい、何やってる?」

コンコンと扉を叩く音と共に、低い声が響いた。
鏡に映った自分を見て、ハッとした。

「ごめん、高橋くん」

「どうした?具合い悪いか?」

トイレから出ると、心配そうにわたしを見つめる高橋の姿があった。

「全然平気」

「ならいいけど、どうせまた何かあったんだろ。さくらはプライベートの事が仕事にすぐ支障きたすから注意な」

プライベートの事。
鋭い高橋の視線に、見透かされてる、と感じた。
わたしの性格はなんて分かりやすいんだろう。

「また社長と何かあったか?」

「…」

「会長か?」

「何で宮沢さんが!関係ないよ!」

「ほんっと…お前は…。
とりあえずお前を待ってる指名客が何人いると思ってるんだ。責任を持って仕事してくれ」

「わかってる…」

ワンピースの裾をぎゅっと握って、わたしを待つ指名客のところに向かう。
「さくら」小さく呼ばれて振り向くと、高橋はじいっとわたしの顔を凝視する。

「何?」

「いや、人の気持ちは良くも悪くも変わって当然だよ」

「どういう意味…?」

「さくらは社長を好きであろうとしている」

「は……?」