「さくらは…俺が殺したんだ…」

力なく、その場に崩れるように落ちて行った光の体。
それと一緒に、光の手の中に握られた指輪のケースが小さな音を立てて落ちて行った。
背中を丸め、震える光の瞳には涙が滲んでいた。

夢の国で幸せそうに笑う人々。それでも目の前にいる光は嗚咽をこらえ、瞳から大粒の涙をこぼしている。
目の前で苦しそうにしている光を、わたしはただ見下しながら、何も言う事が出来なかった。

「俺は………ずっとさくらが好きだった…。
大好きだったさくらと付き合って、毎日が幸せで…同じ職場で働きながら、ずっとさくらを見つめていた…。
でもある日気づいたんだ…。さくらが皆といてもいつも目で追ってる人がいて、その人もさくらの事が好きだって気づいた…」

道端に転がっていきそうになった指輪ケースを拾って、今にも消えてしまいそうな光の体を抱きしめた。

「言わなくて、いい…」

いつも光はわたしを抱きしめてくれた。 そんな光がこんなに小さくなる光を見るのも初めてで
子供のように泣きじゃくって、顔をぐちゃぐちゃにする。

「兄貴とさくらが付き合うようになって…
さくらが自殺する前の日の夜に俺はさくらに会いに行ったんだ…。
それでもさくらは朝日を愛してるのって言って…
そこで俺が…さくらに酷い事を沢山言った…あんなに愛してたのに…さくらをなじって、俺は無理やり…」