光の右の手には指輪のケース。
そこにはわたしの欲しかった未来が全て詰まっている。
けれど目を伏せた光はやっぱり苦しそうだった。
わたしは繋がれた右手をぎゅっと強く握りしめた。
「光、ひとつだけ教えて…。
光は何度かあたしの前で怯えたような顔をした。まるであたしの先に誰かの姿を見たような顔をして…
あれは、なんで…?」
繋がれた右手の力が弱くなっていくのを感じた。
顔を上げて、光を見つめると、あの日見た顔と同じ顔。
まるで何かに怯えるような。 初めてキスをした日と、無理やりわたしをベッドへ押し倒した日
光の全身が震えて、まるで何かを怖がっている子供のように
繋がれた手がわずかに震えているのを感じる。
それでもわたしは、光の目を逸らさなかった。先に逸らしたのは、光だった。
「皆…誤解しているんだ…」
「誤解?」
「あの日、さくらが自殺した事を…。周りは皆兄貴のせいにした。
あの兄貴自身さえ、自分がさくらをそこまで追い込んだと思ってる…
でも…全部全部…本当は違う…」
心臓がどくんと跳ね上がるのを感じた。
それは予感。信じたくなかった予感。
光が好きで、光を信じていて、朝日の事をよく知らなかった頃に考えたくはなかった予感。
崩れていったのは、わたしの手を繋いでいた手が先だったか、それとも



