「使える?」
「いつか俺が店を持った日に、夕陽は使える人材になるって思った気持ちがあった」
夜の仕事をする人間の宿命といえるのか。
お金と色恋が嫌でも付きまとう世界で、光に愛されたいと思っていたのも事実で
利用されたくないと思っていたのも事実だ。
わたしは光の、特別な存在になりたかった。
そして、光が差し出す指輪がその答えで、わたしはいま光の特別な存在になれたのだ。
でもどうして、それがこんなに悲しいのだろう。
「俺が店を出すなら、そこに絶対的なナンバー1が必要だと思った。
夕陽はそんな存在になれるって予感してた。
俺はあの時、お前の気持ちを利用しようとしてた。
お前だけじゃない。俺は長い時間この世界にいて、色々な女の気持ちを利用してきた。
俺の夢はいつだって女の涙の上にある」
わたしを利用しようとした。
さっきまでの不安が少し和らいだのは、それが光の本音で、わたしはこの時初めて本当の光と対峙出来たのだと思っていたからだ。
ショックよりも嬉しさが勝った。
わたしはいつだって、笑って、誰にでも優しい光だけじゃなくて、本当の光を知りたくて、光の本当の気持ちを知りたかったのだから。
言った後に悲しそうな顔をしたのは光の方だった。
「それでも、あの時の気持ちと今は違う。
俺はもうお前を仕事のために利用する女なんて考えてない。
いつからかお前は俺の大切な存在になっていて、お前を誰にも渡したくなくなっていた」
「光……」



