「うん…そだね」

夜になって、パレードが始まる。
煌びやかな電灯がまるで夜のネオンみたい。
キラキラ光って、周囲の皆が音楽に合わせて笑い合う。

私たちは少し離れた場所で、その様を見つめ合う。
皆が幸せそうな顔をして笑っていた。不意に隣にいた光の手がわたしの手にあたる。
あたったら、光は静かにわたしの手を取り握りしめる。
人より少しだけ熱い、この体温が大好きだった。 でももうあの頃とは違う。
ずっと光の考えている事がわからなかった。光は優しい人。でも、誰にも本当の自分を見せてない人。
こんなに大好きなのに、それは不安に変わり、こんなにわたしを切なくさせる。

目が合えば、その強い瞳で柔らかくわたしへ微笑みかける。
でもそれが本当の光かもうわからない。

「はい、光っ!」

わたしは鞄の中にいれておいたある物を光に渡す。

「え?何?」

「誕生日プレゼント!ずっと渡せなかったから!」

光は驚いたような顔をして、包みを開ける。
中身は光がよく着てるスーツのブランドのマフラーだ。
今にして思えば、このプレゼントの選択肢も間違えてたとは思うけど、11月に渡せるのならあの日の選択は間違ってなかったのかもしれない。

「ありがとう。センスいいな」

光は藍色のそのマフラーを自分の首元に巻いて、微笑んだ。

「てゆーかそれ本当は3月に渡そうと思って買った物だったんだけど、今渡してちょうど良かったなぁ~って」

「夕陽から貰えるならなんだって嬉しいよ」

そう言いながら微笑み、光は自分のコートのポケットから、小さな箱を取り出した。
赤いリボンが巻き付かれた小さな箱。
真っ直ぐにわたしを見て、差し出した。