【完】さつきあめ


「夕陽、はしゃぎすぎ!」

「だってー楽しいんだもん!やっぱり夢の国はいいねぇ~!普段の嫌な事全部忘れられる!
あ、光あたしマーメイドラグーンも行きたい!アリエルのショーみたいの!」

「はいはい。お前、ポップコーンまたこぼすぞ」

「こぼしませんよぉーだ!」

と言ってるそばから小さい子供にぶつかる。
ポップコーンが何粒か宙に浮く。
幼い子供がわたしを見上げる。

「わ、ごめん!大丈夫?!」

「だいじょうぶだよ!」

「だからお前言わんこっちゃない。大丈夫?ケガない?」

「だいじょうぶ!!」

小さな子供が私たちの前を走り出していく。

「待ってよー!お兄ちゃーん!」

その後を2人の子供が追いかけていく。
小さな男の子と、女の子。
光は無表情のまま、その3人の後ろ姿を見つめていた。前にもこんな事があった。
光がいま考えている事は、朝日と綾乃の事だ。
きっと3人にもあんな頃があったはずだから。

わたしが光の手を引くと、「あぁ、アリエルのショー見ような」と笑顔を作った。
何度も見てきた光の作り笑い。
何度も見てきたからこそ、本当に笑ってるのか、作り笑いなのかわかるようになったんだよ。
どんなに辛い事を思い出しても、笑ってしまうあなただから。