「俺は結局人から何かを奪い、傷つけるような生き方しか出来なかった」
「宮沢さん…」
「ありがとう。ハンバーグとオムライスが食べたいって言った事覚えててくれて
俺はお前の好きなところ沢山あるけど
お前が俺の小さな頃に何ひとつ与えられなかった物を与えてくれるような優しいところが1番好きだった…」
そう言い残し、涼を抱えて朝日は家を出て行った。
「みやざわ…さ…」
伸ばしかけた手を、自分の頬に持って行った時温かな物が流れていて
初めて自分が泣いているのに気が付いた。
何故、次から次へと、こんな風に涙がこぼれていってしまうのか、もう自分でもわからなかった。
朝日はさくらさんの事で、ずっと自分を責め続けている。
そしてさくらさんを本当に愛していた。
わたしにも誰にもさくらさんの本当の気持ちなんて、わからない。
さくらさんは本当に朝日を憎んでいたのかもわからない。
でも朝日はずっと後悔し続けていた。
「さくらちゃん何かご機嫌だね?」
「え?!そんな事ないですよ~!安井さんといるのが楽しいからかな~」
「またぁ~!!」
「ほんとっ、ほんとっ!ささ、飲みましょう!」
11月に入ったTHREE。
もう少しで、2回目のクリスマスがやってくる。
今日もお陰様でTHREEは賑わっていて、指名が何本も重なって、ありがたいことにオープンから忙しくさせてもらってる。
「さくらさん、お願いします。
菫さんです」
「こんばんわー!お邪魔しまぁーす!」
高橋がわたしを抜いて、代わりにヘルプとして菫さんがやってくる。
「うお、美人さんだなぁ」
安井が少し顔を赤らめるのがわかる。
菫は優雅に微笑んで、丸椅子に座り空になったグラスを手に取る。
妖艶という言葉がふさわしい、朝日の元彼女は、進んでヘルプに着いてくれる事が多かった。
評判は上々。



