「別にお前の好きにしろ、俺への報告はいちいちいらねぇ」
「何で…?」
「何でって、お前があいつの事好きなの知ってるし、あいつもお前の事好きなんだろ。
全部お前の思ってる通りだよ。
さくらは有明と付き合ってた。それを俺が横から取るような真似をした。
さくらはそれに耐え切れずに自殺した。
さくらが死んだのは俺のせいだ」
そう言った朝日の表情は苦しそうだった。
「俺はずっとあいつに苦しみを与えたかった。
小さな時にあいつは俺の欲しい物を全部手にしてた。俺は自分勝手な理由でそれが許せなかった。
大人になって力をつけて、あいつの手にしてるもの全部奪う側に回った。
その結果、さくらは死んだんだ。
有明は心の奥底でずっと俺を許せなかっただろうな…。俺がさくらを殺したようなもんだ。
結果的に俺は罰をくらってんだよ。
お前の事こんなに好きになると思わなかった…。辛いよな、好きな女が他の男のところに行くのって」
「違う!あなたはそんな人じゃない!」
苦しそうだった朝日の表情が段々と曇っていく。
壁に自分の手を強く打ち付けた。
「何が違うって言うんだよ!」
「だって、あなたが、とてもさくらさんを愛してたから…。
さくらさんだけじゃない…あなたはちゃんと人を愛してた…。菫さんだって、ゆりさんだって…。
その証明が彼女たちじゃない…」
「何も違わねぇよ…。俺がさくらを有明から奪うような真似しなければさくらは死ななかった。
あいつ…俺んちのベッドで…薬飲んで…眠ってるように死んでた…
俺の事憎かったんだろうなぁ…」
思い返すように、まるであの日の情景を見てるかのように、朝日は自分が殴った手のひらを見つめ返した。



