「なんか、お前痩せた?」
「そう?」
「飯食ってる?」
「同伴で食ってる」
「つまみも食わねぇで酒ばっか飲んでたら体に悪ぃぞ」
アフターを終えて、トリガーに来るのは日常茶飯事で、涼と話してる時だけ唯一仕事を忘れられる時間であるのは事実だった。
「ただでさえ痩せてんのに、気持ち悪」
涼はわたしにあからさまなおべっかは使ってこなかったし、会えば憎まれ口ばかり叩く。
そんな存在がひとりくらいこの世界にいるのも悪くない。
「気持ち悪いとは何よー、あんたがあたしを好きなのくらいわかってるんだからねー!」
「はいはい。水飲めよ」
涼が水を差し出す。それと同時にトリガーの扉が開かれた。
「げぇ」
入ってきた人を見た瞬間思わず零れた言葉。
そんな事お構いなしにその人物はわたしの隣にドカッと座り、水割り、と涼に命令口調で言った。
トリガーに来ると80パーセントの確率で朝日に会う。
もはやストーカーかと思うくらい。
そう言うと朝日は「お前が来なきゃいい」と言う。もっともだが、このお店はわたしの通っているお店だ。文句を言われる筋合いはない。
「おっさん、はい薄めな」
「おい、涼、てめぇおっさんおっさん言ってんじゃねぇぞ」
「おっさん俺もビールいただきやーす!」