わたしの出した答えの先に、あなたはいたのですか?
待っててくれていたのですか?
どうしようもない現実に足を止める時、一瞬振り返ってしまう。
振り返った先に、あなたの笑顔をいつも思い出す。
もう求めてはいけない面影を探して、何度絶望の夜を越えてきたのだろう。
捨てたくなどなかった。けれど、捨てたくなくても捨てなくてはならない物がそこにはあった。

THREEで抜けた穴を塞ぐようにわたしは仕事に励むようになった。
全力で走り抜けた夜の先に、どうしても欲しかった物がひとつ。
あと一歩のところでいつも届かぬままでいた。

「んー…」

10月も終わり、11月。
前の通りとは全てはいかないものだけど、七色グループで起こった混乱は少しずつ収まりつつあった。
それでも光の抜けた穴は思った以上に大きかった。
それでもこの10月にわたしは今までになかった売り上げを上げて見せた。
それでも浮かない顔。

「なんだよ、壁とにらめっこなんてして」

高橋がバックヤードで突っ伏してるわたしを見て言う。

「壁じゃないじゃん」

壁に貼り付けられた全店舗の売り上げ表を指さし言う。

「すげーな、売り上げ。さすがさくら!」

わざとくさい高橋の言葉の先に、2と書かれた隣にわたしの名前が並ぶ。
わたしが全店舗のナンバー2になるのは初めての事だった。
何人もいるキャストの中で2番目になることを単純にすごいことだと人は言う。
けれど、わたしの先を歩く人がひとりいる。それは孤独と戦うという意味もあったかもしれないけど。