「深海さん?」
「うん。あいつ、お前ともう一度さくらと見ていた頃の夢をみたいんだって。それは綾乃も同じな気がする。
高橋もお前と仕事がしたいって言ってた。レイも、俺の方にくるって予想してたけど、あっさり振られたよ。もう一度さくらちゃんと勝負がしたいって。
俺とか、兄貴じゃなくて、お前がいつの間にか中心に七色は動いていたんだな」
「あたしなんてそんな大したもんじゃないよ」
「でもお前の存在に心動かされた人間が沢山いたんだろ。俺もきっとその1人だった…」
「っ!!」
わたしが、誰かの人生の中心になれる?
何も持たない、このわたしが。
感情が高ぶっていくのがわかる。今にも涙が零れ落ちそうだった。
光はわたしの瞳の涙を指ですくった。
「なぁ、またディズニーランド行こうか」
「はは、突然」
「お前子供みたいに無邪気に喜んでさ、なんかあの時俺もすごく嬉しくなった」
「今度はシーがいいなぁ」
「いいねぇ、シーならお酒も飲める」
「泥酔しないでよ、迷惑だし」
「泥酔するとか、兄貴じゃあるまいし」
「そうだね、光はいつだって完璧だもんね」
「俺は全然完璧な人間じゃないよ。お前がそう見えたならお前の前でそんな人間を演じてたんだ。
俺は昔からいい子を演じるのが好きで、いい子に見えれば人から好かれることを知ってたから。
そんな自分をいつだって捨てきれなかった…」
「光…あたしは七色で自分のやるべきことを全部やって…そしたらさ…」
言いかけて、言葉が止まる。
そうしたらふわりと後ろから光の香りがした。海の香りだ。