「なんて、顔してんだ」

トリガーに着いた頃には美優もはるなも相当酔っぱらっていた。
わたしの顔を見て、涼は開口1番そう言った。

「何となく事情はわかるけど」

綾乃はわたしへ目配せをして、酔っぱらう美優やはるなを介抱していた。
週の始まりのトリガーは思っていたよりずっと静かで、カウンター席は全部空いていた。

涼がわたしをカウンターへ座らせると、アルコールの入ってないお茶を差し出した。

「お前ちょっと顔色悪いな、酒は止めておけ」

「涼、あのね…」

「わかってる、わかってる、ラインで言ってた話だろ。
俺もお店に来る女の子たちに何人か声をかけてるから。
結構お店辞めて違う店探してるって奴も多いし、俺も出来る事は協力するから」

涼はこういう時ずっと優しい男だ。
不器用で口が悪いくせに、いざとなると優しいんだ。

「そうじゃなくて…。それは嬉しいけど…」

「で、お前はお店を辞めるって件についてまだぐだぐだと悩んでるわけだ。
おっさんと南の元カレ?は兄弟だし」

「涼?!」

「綾乃さんと美優の話断片的に聞いて繋げたら俺の中でそういう事になるわけなんだけど?」

涼は本当に勘がいいというか、何というか。

「てゆーか、おっさんとあいつそっくりじゃん。よくお前も気づかないもんだよ」

「似てないよ…。似てない」

「さくら、さくらは七色を辞めるべきだと俺は思うよ」

涼まで、そんな事を言うなんて。