「キャストも黒服も有明についていった。俺は…あいつにはなれない…。
あいつは俺より経営者として才能があると思うよ。俺はいずれ、自分の手にしていたもの、全てをなくすだろう」

朝日は何も映さないような虚ろな瞳で、自分の両手を見つめていた。

「宮沢さん…それでも深海さんたちは残ってくれてるよ…?!
由真さんだって、綾乃ちゃんたちだって残ってる…。
それに宮沢さんは光になろうとなんかしなくていい…!宮沢さんは宮沢さんで、光は光だもの!
あたしは…光になくてあなたにあるものだって知ってる…」

わたしの言葉に顔を上げた朝日は、呆れるように笑う。

「お前ってやっぱ優しいやつ。
俺はずっと羨ましかったよ。
どんなに離れても、離されても、ずっと有明を想うお前を
お前にそうやって想われる有明を…」

「宮沢さんにだっているじゃない…。
あんなに大切に想ってくれるゆりさんが…。
あたしがゆりさんと同じ立場なら、宮沢さんのお店でずっと働こうなんて思えない」

ゆりさんの名前を出すと、朝日はもっと苦しそうに笑う。

「ゆりには感謝してるし、ゆりを尊敬してる。
プライドを持って仕事をしてさ、ずっとナンバー1を張ってくれてる。
…でも俺は、もう、お前じゃなきゃダメなんだよ」

心の深くを突き刺すような真っ直ぐな想いに、応えられない。
応えられないのに、この場所に立つ意味を何度も考える。