【完】さつきあめ


「あたしは、綾乃ちゃんが、原田さんに呼び出されたって…」

‘さくらが会長の物になるより、俺の物になる方があの人にとってよっぽどマシでしょ’
何でこんな時に、いつか原田に言われた言葉を思い出したのだろう。

朝日はわたしの言葉を無視して、THREEの扉を開けた。

中から口論が聞こえてくる。

「そんな話あたしにしてどうなるっていうのよ?!」

「俺はただ君がどっちにつくか知りたいだけだ」

「あんたには関係ない!
それとも何?!あんたも光と一緒ってわけ?!
そうやって朝日を裏切るつもりなの?!」

綾乃が光を光と呼ぶことは知ってた。
血の繋がった兄だから、それはもう違和感はない。
けれど、綾乃は、朝日の事も朝日と呼び捨てにした。

原田が綾乃の腕を掴んだ瞬間、朝日は大きな声を荒げた。

「綾!!」

もちろん、朝日が綾乃を綾と呼ぶのも知らなかった。

目の前の映像がまるでスローモーションにも見えた。

朝日は原田に馬乗りになると、力いっぱい原田の顔を殴った。

「宮沢さん!」

わたしが駆け寄ると、朝日とわたしを見て、原田が低く笑った。
口から流れる血を拭って、立ち上がって、朝日を嘲笑うように見つめた。

「あんたも可哀そうな人だな、好きな女にも、自分の手元に置いておいた弟にも裏切られるなんて」

原田の言葉に、朝日は眉をひそめる。