【完】さつきあめ

「そんな事ない!」

「そんな事あるだろ!本気でそいつの事が好きなら、四の五の言わずとっくに辞めてるぜ?」

「馬鹿!」

「何が馬鹿だよ?!俺間違った事いってねーよ」

「間違ったこと言ってないから馬鹿って言ってんだよ!!!」

涼の言ってる事は図星をついているから痛い。
光の事は好きだけど、本音ではわたしはお店を辞めたくはないのだろう。
けれどそれは光を本当に好きではない事になるのだろうか。

「お店の仲いいやつにも言ってねぇんだろ?」

「うん…」


美優や綾乃。はるなにも言えずにいた。
美優とはるなは喜んでくれるだろう。きっと綾乃も喜んでくれる。
さくらに幸せになってほしい、と言うだろう。
でも、今このまま光と一緒になる事が本当にわたしの望んでいる幸せなのかはわからない。

「ひっかかってることはお店の事だけ?
おっさんの事は?」

真っ直ぐとわたしを見る、涼の視線が痛かった。
確信ついた事をいつも言うくせに、わたしが本当に言われたくない事はこうやって濁す。

「宮沢さんの事は…関係ないよ…」

「へー、そうか。ならいいけど」

朝日は関係ない。
でも、朝日はどんな顔をするのだろう。
わたしがお店を辞めて、光と付き合う事になれば、朝日は?
怒るだろうか、それとも傷つくのだろうか。
でもお店を辞めた後となれば、余計な口出しは出来なくなる。