それでもゆいは決して首を縦には振らなかった。
彼女の中で強い意志で決めた事なのだろう。
「ゆいはいっつもお客さんの前で笑ってた。
それってきっとすごい事だよ?!嫌な事があってもいつも笑えるって誰でも出来る事じゃないもん!
ゆいのお客さんは、そのゆいの笑顔を見るためにお店に来てたんじゃないかな…」
「それでもあたしはやっぱりお客さんひとりひとりをちゃんと人間として見てなかった。
だから結果があれだった。
でも誤解しないで、もう二度とこの仕事をしないって決めたわけじゃないの…。
いまは一旦休んで、これからの事を考えたいの。
もしかしたらいつかまたこの仕事をやるかもしれないし、もうやらないかもしれない。
あたしね、さくらの接客を見て、いい仕事だなって思った事があった。
でも今のあたしじゃ、さくらみたいにこの仕事に真摯に向き合う事は出来ないかと思う」
「でも…寂しいよ…」
「さくらは本当に優しいねぇ…。
あとね、もうひとつさくらに謝らないといけない事があるの」
「謝らないといけないこと?」
「光くんのこと…」
光の事…。
「あたしと光くんが関係があったのはあたしがTHREEに入る前だし、さくらが七色グループに入る前なの。
あの頃の光くんはなんか荒れてたし、誰とでもそういう関係を持つ人だったから別にあたしが特別だったわけじゃないと思う。
でも光くんは本当に変わったと思う…。
なんだろうね、あたしに絶対なびかない男って、さくらの事好きになるんだよね。
光くんも、宮沢さんも、ね」
「………」



